制作・文責:Shirota

MSIのオーディオ 汚し系を試す

MSIには非常に多彩なオーディオエフェクトが装備されています。
これらのうち、最近では主流の手法となってきた汚し系をピックアップしていきたいと思います。
まずは、原音をお聞きください(全てのMP3ファイルは200〜300キロバイト前後です)。

原音MP3

AKAIのS3200XLにてサンプルを組み、ドラムとして演奏してあります。
今回は、これを4小節録音し、オーディオトラックで使いまわしていきます。
全体図はこんな感じになります。

※注意
音量はファイルごとにまちまちですので、スピーカのボリュームには気をつけてください(特に過激系の音もあります)。

○MSSエフェクト - リングモジュレーション


MP3 - リングモジュレーション

リングモジュレーションとは、原音をサイン波などでモジュレートし(結果FM効果のようになることもある)、その差と和を足し算したものです(不確かすいません)。大抵は金属的な音になるのですが、 MSIのものだと強烈にフィルタを掛けたようになります。
詳しいパラメータはヘルプを見ていただくとして(そもそもShirotaは今日に至るまでほとんどマニュアルを見ていないので、感覚でしかパラメータを理解していません(^^;)、 まずは画像をご覧下さい。

一般的なシンセサイザにはカットオフフリケンシとレゾナンスがありますが、MSIのリングモジュレーションだと、周波数を上げ下げすると、レゾナンスを強めてカットオフリケンシを上げ下げしているような効果があります。

○MSSエフェクト - フリケンシーモジュレーション


MP3 - フリケンシーモジュレーション

名前とパラメタから察するにリングモジュレーションに近い仕組みのようですが(詳しくはマニュアルを)、こちらは激しく歪ませたり、弱めに掛ければ質感を変化させたり出来ます。ただ、予測不能系(!)のエフェクトでもあるので、ある日突然火を噴くこともあるでしょう(笑)。

タイプは4種類あり、0、2は大人しめ、1、3は過激系でした。

○AEP - ピークドライバ


MP3 - ピークドライバ

少々扱いが難しいエフェクトです。どうやらアンプやスピーカの歪み特性をシミュレートするもののようです(詳しいことはマ(略))。

うまくすれば、古い機器の特性をシミュレートできるかもしれませんが、リアルさには程遠いと思います。しかし、単純なディストーションやオーバードライブよりも緻密に歪み方を「音量レベル」という面からコントロールできるので、生楽器系の方は重宝するかもしれませんし、個人的にはMSIの中で唯一多機能で繊細かつ大胆(笑)に作りこめるエフェクトだと思います。

○AEP - ピッチシフター


MP3 - ピッチシフター

いつの間にこんなものが出来たのでしょう (笑)。多分面倒ですが、これでMSIでACIDみたいなことも出来ますね(^^

大体は下げ目にして使うとローファイ感がいい感じです。

○組み合わせ - フリケンシーモジュレーション+8バンドEQ


MP3 - フリケンシーモジュレーション+8バンドEQ

フリケンシーモジュレーションは高域がかなり強めに出ることもあるので、それを質感的にEQでコントロールして見ました。
パラメータ画像
EQの変わりにフィルタやアイソレータ、またはフランジャーなどを組み合わせても良いかもしれません。

○MSSエフェクト - ダイナミクスチェンジ(最大)


MP3 - ダイナミクスチェンジ(最大)

簡易コンプのようです。名前の通りダイナミクスを抑えたり強調したりしてくれます。最大にして使うと、質の悪いカセットテープに録音したようになります(実際はもっとマイルドな感じです)。

○組み合わせ - ダイナミクスチェンジ(最小)+α


MP3 - ダイナミクスチェンジ(最小)+α
ダイナミクスパラメータ画像

ダイナミクスチェンジですが、今度はパラメータを最小にして見ました。すると、今度はリズムマシンのようになりました。
ドラムの場合、残響がほとんどかかっていないと、アタック成分だけが抽出されたためのようです。
MP3後半2小節は、これの前に8バンドEQを掛け、高域を強めてからダイナミクスチェンジを掛けています。
ダイナミクス系エフェクトの前にEQを掛けると、ダイナミクス系エフェクトはEQ後の音を処理しますので、EQ後は場合によってはダイナミクスが大きく変化し、その後のダイナミクス処理の結果が大きく変わります。ダイヤグラムにすると以下のようになります。

原音→EQ処理(この時点で既にダイナミクス変化)→コンプなどのダイナミクス処理(EQ処理が強調される形になる)

といった感じになります。

最後に

これらはMSIが標準で備えているエフェクトのほんの一部に過ぎません。他にも揺れもの系やローファイに特化したもの、高度なEQ処理をするもの、そして残響系などがあります。また、今回はインサーションとしての使い方を特筆しましたが、MSIの場合にはさらに8Busを装備していますので、かなり複雑で融通の利くことが出来るでしょう。
また、そのバスの一つに揺れものを設定しておき、オルガンを鳴らしながらオートメーションでバスセンドを上げていけば、ロータリースピーカのような効果も期待できるでしょう。

そして、今回あらためて思ったのですが、MSIのエフェクトは全体的にじゃじゃ馬というか、高域が強くそして荒いというか、それゆえ繊細な空気感やダイナミクスを生かすミックスダウンは少々不得意な感じがします(それでもウデしだいである程度までは突き詰めることは可能でしょう)。しかし、不安定ではありながらも、分かりやすく掛かってくれる(リアルかどうかは別として)エフェクトは、扱いさえ間違えなければ強力な武器になりえるのです(それは諸刃の剣でもあります(笑))。

あ、そういえば、ミックスダウンした直後に気づいたのですが、最終的にはこんな波形になっていました。 このようなオフセットの掛かり方はおそらくバグだと思うのですが…(ダイナミクスが犠牲になってしまう…)。